/masa晴読雨読 その13


 今回は片山泰宏著『デモンパラサイトリプレイ 異形たちの街角』です。




 悪魔憑き、ミュータント、AAS、サイボーグとシステムでできるPCタイプ勢揃いの正統派リプレイです。
 なにが正統派って、ちゃんとダークヒーローものになってるんですね。
 これまでのリプレイシリーズは、全裸!焼肉!コメディ!といったいつものSNE節だったんで、ようやく世界観に合った作品が世に出されました。
 本当に長かった……(いちファンの呟き)


 シナリオも連続誘拐事件や謎の魔獣、警察による悪魔憑き狩りなど、ダークヒーローものの名に恥じない後ろ暗く非日常的なもの。
 PCの掛け合いやストーリー進行は定石に乗っ取っていて、とても模範的。
 変な癖もなければ仰々しくもないので、初めて読むリプレイとしてもいいかもしれません。
 所属の違うPC同士が、自身の目的や利害を擦り合わせつつ事件に関わる過程は、群像劇を遊ぶ参考になります。
 特に参考になるのが、企業の工作員PCと警官PCの2人で、部外者と協力する際に「事件解決のため」と折り合いをつけていくところが上手い。
 普通ならば、頑なに部外者を立ち入らせない立場の2人ですが、それぞれ自身の役割や性格を利用し、巧みに妥協点を見つける手腕は見事です。


 派手な物語や奇抜な個性を求める人には物足りないでしょうけど、万人に安心して薦められる良作となっています。
 《デモンパラサイト》をシリアスに遊ぶ際には、ぜひとも読んでおきたい逸品です。

/masa晴読雨読 その12


 今回は加納正顕著『ダブルクロスリプレイ・デザイア』です。




 TRPG業界でも珍しい、商業作品としては(たぶん)初の悪の側の人間を主人公に添えたリプレイ。
 ヒーローとダークヒーローの違いは“後ろめたさ”と“歪み”だと個人的に思っているんですが、今作のPCたちを見てると、まさにダークヒーローしてると思うんですよね。
 弟や母親(?)に依存している女子高生2人に、力への妄執や後悔に引きずられる大人2人と、PCの誰もが真っ当ではない。
 TRPGに慣れた人ほど、彼らには違和感を覚えると思いますが、それこそが、この作品の見所でしょう。
 PCが「いいように使われる道具になりたい」なんて口走れば、誰もが狂ってると言いたくなるはずです。


 PCたちもさることながら、難しい題材に挑戦したGMもまたすごい。
 モラルが通用しないPC各人の欲望を巧みに刺激し、シナリオへのモチベーションを高めていくところは、シナリオ構築やマスタリングの参考になります。
 また、一般人を絡めた仮初めの日常の場面などは、その危うさなどもあって非常に《ダブルクロス》らしいです。


 全体として物語に重点がおかれているためか、戦闘描写はあっさりめ。
 戦闘好きなワシとしては物足りない印象ですが、作品の雰囲気や尺の長さを考えると、しかたないところでしょうか。

/masa晴読雨読 その11


 今回は、芥川龍之介著「秋」です。




 文才溢れる才女、信子は家庭の事情である資産家と結婚した。
 信子には幼なじみの俊吉という思い人がいたのだが、彼は信子の妹と結婚。
 気持ちの整理はついていたはずの信子だったが、夫とのいさかいや鬱々とした暮らしが続くうち、俊吉への思いが甦る。
 その思いは、数年ぶりの里帰りをきっかけに、さらに膨らんでいき、ついには妹にも気付かれてしまう。
 帰路についた信子は、街中で俊吉とすれ違うものの、思いを打ち明けることなく、夫の元へと帰っていく。


 内容的には昼ドラのプロローグ。
 もし、信子が俊吉と関係を結んだなら、泥沼の展開になるところでしたが、幸いにもそんなことにはなりませんでした。
 これで信子が不倫上等な人なら、ただの爛れた奥様の昼ドラと化すところでしたが。
 彼女が理性ある女性と描かれているため、思いの切なさや悲劇性だけが強調されています。


 また、作中でたびたび描写される松林が、作品イメージの統一に貢献しています。
 秋〜冬にかけての、葉が散った後の寂しい松林の情景描写が、信子の憂鬱な心理を雄弁に伝えてくれます。
 だからこそ、読者は彼女にすんなりと感情移入できるんですね。


 行間を読む必要のないほどシンプルで力強い構成。
 それが芥川作品の特徴だと勝手に思っていたんですが、この作品は行間を読ませまくります。
 信子の心境の変化や葛藤が、だんだん文章を書かなくなっていく、などの象徴的な行動のみで表され、読者の読解を誘発。
 それが、感情移入をさらに加速させるという副次効果まで伴います。
 たとえ、信子に感情移入できずとも、この多重構造だけで充分に楽しむことができるかと思います。

今日(4月16日)までのあらすじ


 どうもどうも、ごぶさたでした。
 hige gunです。
 4月7日にマイミクさんと狂言観に行ったのをきっかけに、その人の家に1週間ちかく泊まってました。


 アホのようにケーブルTVばかり見てた。
 ケーブルTVって便利だね。
 アニメ専門チャンネルとか、まさにワシ得。
 特撮メインの東映チャンネルなんてものもあるし、地上波が廃れるのも無理ないわ。
 興味があったり、趣味じゃない作品もいろいろ見れて、見聞が広まった感じがする。


 その間、日記や文章書く気はナッシング状態。
 なんというか、すごく楽だった。
 その気楽さに気付いた時は、文章書くのどれだけ重荷だったんだと、愕然としたよ(・ω・;)
 ただ、それで分かったこともあって。
 ワシという人間は、常に自分の楽しみを追究してないといけないみたいだ。
 考えてみたら、ここ1〜2年のパワーダウンとか、鬱症状で楽しむ能力が激減してた頃だし。
 友人のみんなが面白いと言ってくれた作品は、全部ドーパミン全開でナチュラルハイになった状態で書いていたものだし。
 やっぱり、人吉への島流しがだいぶ爪痕を残してるみたいだ。
 得るものもあったけど、無くしたものはもっと大きかった……。
 あ、今はTRPGや友人との付き合い、マイミクの皆さんのおかげで、だいぶ回復しましたよ?


 結果的にいえば、この空白の期間はいい休みになりました。
 また以前のように、楽しさ全開で文章書けるように、マイペースで頑張りますっ☆(←キラッ☆的なアクセント)

/masa晴読雨読 その10


 くっ……!
 OSR力が制御できない……暴走するのか……!?



 今回は芥川龍之介著「アグニの神」です。
 太平洋戦争開戦前の上海。
 魔法使いの老婆に浚われた娘の妙子と、彼女を探す書生の遠藤が体験した、ある不思議な出来事のお話。


 ジャンルはホラーファンタジー
 絵本のようなシンプルな展開と簡易な文章は取っつきやすく、文学に後込みしてしまう人でもライトノベル感覚で読めると思います。
 敷居の低さもさることながら、様々な要素をまとめた内容の濃さも魅力です。
 悪の魔法使いからの脱出&救出劇。
 インドの神や魔法などのファンタジー要素を基本に、上海に住むインド人の占い師というエキゾチックな雰囲気の演出。
 超自然的現象が起きて、読者にも登場人物にも詳細が分からないまま物語が終わる、ホラー的なエンディング。
 単独でも作品になるそれらの要素が贅沢に盛り込まれたことで、読書家でも満足できる極上のエンターテイメントに仕上がっています。
 しかも短編なので、読むのに必要な時間は10分程度。
 改めて、文豪のすごさを見せつけられました。

/masa晴読雨読 その9


 今回は、モーパッサン・ギ・ド著《ある自殺者の手記》です。
 いや、違うんですよ?
 海外文学を読もうと思ってたわけじゃないんです。
 青空文庫では、著者名が秋田 滋になってたんですよ。
 だから、日本人の著作かなーと安心してページを開いたら……ご覧の有り様ですよ。
 というわけで、ワシは悪くないのです、たぶん。




 言い訳はこのへんにして、レビューにいきましょう。
 結論からいうと、この作品、読む人を選びます。
 「閉塞した日常」というものに実感がもてる人でないと、内容が完全に理解できないからです。


 内容自体は簡単で、作中で自殺した男についての報告と、その「彼」が残した手記が綴られているだけです。
 「彼」の半生が書かれた内容のどれもが、ほとんどの読者にとって身近な出来事であり、自然に感情移入が深まっていきます。
 そして、感情移入が最大に達したところで、「彼」がいかに人生を無為に過ごしていたかの告白が炸裂。
 その告白というのが、パターン化された日常に対する慣れと倦怠に気付いたというもの。
 それが原因で感覚や感受性が鈍化し、さらに倦怠を招く悪循環。
 気付きはしたが、時すでに遅く、感覚や感受性を取り戻そうにも、もはや無理。
 そんな状態になってしまった自分に対する後悔と絶望。

 感情移入し、一体化していた「彼」の告白によって、読者自身の後悔や絶望が刺激され、彼が自殺することに大いに納得。
 下手すると、「これって俺じゃん。なんて無駄で取り返しのつかない人生だ。もう死のう」、なんて考えるに至る危険性があります。
 自殺者の半生と心理から、逆説的に有意義な人生の奨めが作品の趣旨でしょうが、人によっては刺激が強すぎです。


 死と人生について考えるなら是非ともオススメの作品ですが、ネガティブな精神状態で読まないようにお願いします。
 作品の暗黒面に引きずり込まれて、自殺や自傷しかねないので。


 ほんと、作品って怖いですね(・ω・;)

ちょっと工夫してみること

 このあいだ(といっても1ヶ月以上前ですが)公式シナリオをGMした時、PLの何人かが発言のタイミングを図りかねていたようでした。
 その公式シナリオ、NPCのセリフが(内容としては一気に言うべきなのに)文脈ごとに別々に分けてあったせいかもしれません。


 改善策としては、複数並んでいるセリフを意味ごとにまとめて話す、その合間合間にシナリオを伏せて発言していいタイミングを示す、などの方法がいいかもしれません。
 今度、公式シナリオをGMするときは、その方法を試してみようかと思います。