/masa晴読雨読 その12


 今回は加納正顕著『ダブルクロスリプレイ・デザイア』です。




 TRPG業界でも珍しい、商業作品としては(たぶん)初の悪の側の人間を主人公に添えたリプレイ。
 ヒーローとダークヒーローの違いは“後ろめたさ”と“歪み”だと個人的に思っているんですが、今作のPCたちを見てると、まさにダークヒーローしてると思うんですよね。
 弟や母親(?)に依存している女子高生2人に、力への妄執や後悔に引きずられる大人2人と、PCの誰もが真っ当ではない。
 TRPGに慣れた人ほど、彼らには違和感を覚えると思いますが、それこそが、この作品の見所でしょう。
 PCが「いいように使われる道具になりたい」なんて口走れば、誰もが狂ってると言いたくなるはずです。


 PCたちもさることながら、難しい題材に挑戦したGMもまたすごい。
 モラルが通用しないPC各人の欲望を巧みに刺激し、シナリオへのモチベーションを高めていくところは、シナリオ構築やマスタリングの参考になります。
 また、一般人を絡めた仮初めの日常の場面などは、その危うさなどもあって非常に《ダブルクロス》らしいです。


 全体として物語に重点がおかれているためか、戦闘描写はあっさりめ。
 戦闘好きなワシとしては物足りない印象ですが、作品の雰囲気や尺の長さを考えると、しかたないところでしょうか。