悪夢迷宮1


 近年、心の闇から生まれたナイトメアの力は、増大の一途をたどっていた。
 その原因が、社会構造によるのか人の心の変化によるのかは分からない。
 しかし、ナイトメアの力の増大はまぎれもない事実である。
 ナイトメアにとりつかれた本体の心の壁を表すはずのナイトメアウォールは、いまや現実を蝕む迷宮を作り出すほどに強くなっていた。


 ハンターの間では“ナイトメアラビリンス”と呼ばれる、そのナイトメアウォールは現実世界を飲み込み、一定範囲内を迷宮にしてしまう。
 通れるはずの道が通れない。
 行けるはずの場所へ行けない。
 時間の流れがおかしい。
 それらの現象は、全てナイトメアラビリンスの影響である。
 ナイトメアラビリンス内では、通常と異なる物理法則が成り立ち、夢の力を持つ者以外は違和感や異常に気づかない。
 また、ナイトメアラビリンス内ではナイトメアの活動は活発になっており、自分の化身や分身を生み出し、ハンターや犠牲者を襲うことができる。
 そのうえ、罠や障害を仕掛けることができ、その内容はナイトメア自身のもつ超能力の枠に捕らわれない。