FEARシステムの弊害 試行錯誤の仕方と必要性


 再び続き。


 「試行錯誤と言ってるが、けっきょくどうやるんだ?」とか「抽象的すぎて、さっぱりわからん」という人のために具体例を挙げてみよう。
 まあ、ワシの経験談にすぎないのだが(笑)


 ワシがハンドアウトシステムを搭載した現代ものGMをした時のこと。
 PC1枠のPLが、女をセフレにしか思ってないDQNキャラをやりたいと申請してきた。
 もちろん、シナリオコネのヒロインにもSEX目的で近付くのである。
 そんなPCは想定してないし、今まで卓にDQNキャラがいたこともないので対応の仕方が分からない。
 よっぽど断ろうかと思ったが、受け入れることにした。
 この時、ゴールデンルールなりGM権限なりで却下もできた。
 が、それをやると『なんか負けた』ような気になりそうだったし、経験にもなるだろうと、そう思い直したのだ。
 かくして対応策も考えずに、セッションスタート……は時間の都合上で後日となり、その後はメンバーのスケジュールが合わなくなって立ち消えとなった。
 いちおうPLにも対応策を聞いたが、「自分で考えてやってみたほうがいい」と言われて考えることに。
 それから1週間、あーでもないこーでもないと頭を悩ませる日が続いたとか続かないとか。


 ちなみに今なら対応策は分かる。
 件のキャラのような場合、ライバルDQNを登場させ、「あの娘はオレが骨抜きにしてやるZE!」とか挑発すればいいのだ(笑)
 PC1が嫌うようなDQNキャラにしておけば、対抗心やらなんやらでヒロインの奪い合いが発生し、結果的にはヒロインに積極的に関わるようになる。
 コトにいたる寸前で、ヒロインを狙うラスボスが妨害すれば、ラスボスと利害が対立する。
 PC1の戦う動機ができたのだから、あとは他のPCが登場しやすい場所でラスボス戦闘を起こせばいい。
 なんなら、ライバルキャラが中ボスでもいいや(笑)
 と、相手の申請を真剣に受け止め、頭を捻ったことで、ワシはまたひとつ不可能を可能にした。


 TRPGをやっていれば「何言ってんだ、こいつ」と思いたくなるような発言に出会うこともある。
 とはいえ、そこで分からないで終わっては意味がない。
 相手は何が目的で、セッションをどうしたくて、そんな発言をしたのか。
 TRPG者としては真摯に受け止め、考える必要があるだろう。
 TRPGセッションの試行錯誤とは、相手を理解しようとする努力のことだ。
 ハンドアウトは、その努力が形になったものにすぎない。
 GMが『何を前提に今回のシナリオを考えたのか、理解してほしい』という意思を表すツールである。
 このあたりが、TRPGがコミュニケーションのゲーム、と呼ばれる所以だろう。






 もうちょっとだけ続く。