/masa晴読雨読 その7
今回はいつもと違い、漫画のレビューです。
もう漫画やリプレイのレビューも、こっちにまとめてしまおうかな(・ω・;)
今回紹介するのは、花輪和一著《刑務所の中》。
改造エアガン所持で実刑を受けた作者の、獄中体験記です。
本を開くと、まずはその綿密な描写に驚かされます。
毎日の食事の献立。
各施設の間取り。
どんな囚人や職員がいて、何を話しているか。
それらが圧倒的なリアリティーで目の前に迫ってきます。
あたかも、自分とコマの中の作者が入れ替わってしまったかのような錯覚に陥るかもしれません。
少なくとも、ワシはそうでした。
これらが全て、記憶で描かれているというのですから、その観察力・記憶力には、ただただ脱帽です。
また、そのリアリティーを支えているのが、エピソードの身近さにあります。
人物たちの行動や言動、作者の心理の傾向が、一般社会に生きるもののそれと酷似しているのです。
その代表的なのが、タバコの話でしょう。
愛煙家の作者がタバコを禁止され、吸いたい吸いたいと苦しんだすえ、新聞紙と消しゴムをタバコとライターに見立てて、吸ったふりをする……。
この話を見て、禁煙を体験した人なら、思わず「あるある」と言ってしまうんじゃないでしょうか。
また、この作品には刑務所を題材にした作品にありがちな、堅苦しいテーマや教訓がありません。
ただ、刑務所で生きる犯罪者や職員たちの日常が、淡々と描かれているだけです。
だからこそ、読み手によって様々なテーマが発掘され、誰が読んでも何回読んでも新たな発見を楽しむことができます。
もしかしたら、それがこの作品の最大の特徴かもしれません。
堅苦しくも重くもならずに刑務所ものを読みたいなら、この作品をオススメします。
ただでさえ少ない刑務所もの。
きっとあなたの好奇心を満たし、新たな発見ができると思います。