/masa晴読雨読 その8


 今回は、メアリー・シェリー著《フランケンシュタイン》です。




 読むきっかけとなったのは、本田透氏の著作《世界の電波男》に触発されてのことでした。
 本作品を読了してみると、氏のいう通り、イケメンとキモメンーーひいては強者(環境に恵まれた者)と弱者(環境に恵まれなかった者)の物語であったことに気づきます。


 本作品は、ヴィクトルと怪物の2人を通して、強者と弱者の心理を克明に描写しており、それが最大の見所です。
 過ちを犯しながら、自己弁護と現実逃避を繰り返すヴィクトル。
 善良にして勤勉だったのに、醜さゆえに忌み嫌われて絶望する怪物。
 それぞれが、現代社会における強者と弱者の状況、そして心理にそのままあてはまります。
 なぜなら、ヴィクトルの自己弁護は、失敗を認めない強者にありがちな心理ですし、怪物の絶望は、ないがしろにされた弱者が少なからず抱くものだからです。
 まさに、社会の縮図。
 陳腐な言い方をすれば、社会や生命における格差の物語なのです。
 人類不変のテーマをはっきりと描いた本作品を、わずか18才で書いたというのですから、そのするどい洞察と感性には驚くしかありません。


 最近、何かと取り上げられている格差問題。
 それを乗り越える糸口を、本作品に触れることで見つけられるかもしれません。
 もし見つけられなかったとしても、登場人物たちの人生に触れて、共感や慰めを得ることはできると思います。
 完全に悲劇なので、かえって落ち込むかもしれませんが……。