/masa晴読雨読 その3


 独断と偏見による活字レビュー、/masa晴読雨読。
 今回は、海外の純文学、カフカ著《変身》です。




【あらすじ】
 主人公グレーゴルは、ある朝起きると、一匹の巨大な虫に変わっていることに気づく。
 驚き、恐怖する周囲。
 なぜ変身したのか、その原因も明かされぬまま物語は進む。
 だんだんと、グレーゴル自身も家族もグレーゴルの変化に慣れ始め、それなりの日常を送るようになる。
 しかし、日々虫のそれに変わっていくグレーゴルの心境と共に、家族もまた変わり果てた稼ぎ頭の世話に疲れ、荒んでいった。
 やがて、家族はだんだんとグレーゴルを疎ましく思うようになり、グレーゴルを追い出そうと考え始めた。
 その後、グレーゴルは死ぬが、彼の死を悼む者は一人もいない。
 むしろ、厄介事が無くなったと、晴れ晴れとした気持ちで新しい生活に希望を見いだす家族であった。


【感想】
 さすがに純文学、俗語を使わず、簡易な言葉を綴って非常に読みやすいです。
 主人公が虫に変化するというオカルト的な展開でありながら、まるで日常のことのように錯覚してしまうのは、事実のみを淡々と描写した、その作風ゆえでしょうか。
 技術面だけでなく、作品のテーマも多彩な解釈ができる素晴らしいものになっています。
 ワシが思ったのは、これは社会的弱者をテーマにしているのではないか、ということです。
 誤解を恐れずに申し上げれば、社会的役割を果たせなくなった者、または家族の中での役割を果たせなくなった者が主人公=虫として象徴的に表現されているのではないかと。
 家族の消耗の過程は、介護やケアを行うことで蓄積されていくストレスを表現しているのでは?
 以上の私見は、グレーゴルの家族が彼に向ける正と負の感情のバランス、それが変化する過程の描写をワシなりに解釈した結果です。
 実際に介護やケアをしている人からどやされそうですが、人間誰しも一度はそうした感情が浮かぶのではないでしょうか?
 人格破綻者であるワシの、くだらない妄想であれば、それでよいのですが……。