デモンパラサイト 『それぞれの始まり、夏の終わり』40
「なんだ、それは?」
奇妙に思い、朱夜に尋ねる。
「さっき、正人に託された」
そこには動揺もためらいもない、いつもの冷静な朱夜がいた。
「……なんだと?」
「正人はなにかを考えている。反撃のためのなにかを」
「なにかとはなんだ」
「それは分からない。だが、正人は負けたままで終わらせるようなやつじゃない」
「…………」
反論はしないキューだっが、明らかに不信感を示していた。
「これには今の状況と、顛末が書かれている。部屋で読もう」
悪魔化を解いた朱夜はそう言うと、落ち着いた足取りで家へと戻っていった。
キューは納得できないようであったが、やがて朱夜に続いた。
「なるほど、009もいたのかね。確かに二対一では分が悪いね。よろしい、後は指示があるまで待機したまえ」
朱夜の悪魔寄生体回収に失敗した正人は、研究所の渡部の部屋にて報告を行っていた。
渡部の隣には白石もいた。
失敗したにも関わらず、渡部は不機嫌な様子を見せなかった。
むしろ、成功だったかのように上機嫌ですらあった。
おかしいとは思いながらも、理由を聞くわけにもいかず、ただ唯々諾々と指示に従い、自室へと戻っていった。
「教授、本当にいいのですか? これではやつに情報交換のチャンスを与えたようなものでは……」
正人が部屋を出た後、たまりかねて渡部に進言する白石。
正人の気質を少しでも理解した者にとって、彼の危惧はもっともであった。
「それでいいのだよ。むしろ、そうしてくれないと困る」
「は!?」
あまりに頓狂な答えに、白石は自分の耳を疑った。
説明を乞おうと口を開きかけるが、渡部はそれを制し、語り始めた。