デモンパラサイト 『それぞれの始まり、夏の終わり』34


 カプセルの中に満たされた液体の中で、一人の少女が浮かんでいた。
 愛らしい顔の、その少女は間違いなくミナ。
 正人と暮らし、一緒に遊び。
 そして、白石の槍から庇って死んだはずの。
 ミナという名の少女。
 しかし……。


 「……」


 もはやミナの面影は首までにしかなかった。
 首から下の肌は、エメラルドのような透き通った緑色になっていて、淡く発光している。
 華奢な身体は奇怪に膨らみ、歪んでいた。
 鎧を纏っているか、外骨格に包まれているようである。
 だが、鎧にしては生々しく、肌にしては無機質で、外骨格にしては柔軟性がありすぎる。
 か細かった手足からは何本もの触手が樹の根のように生え、栄養を吸収しているのか絶えず蠢いていた。
 小さな尻からは尻尾が伸び、背中には羽を思わせる無数の突起物があった。
 見れば見るほど理解できない、まるで異質な姿。
 が、その姿に得体の知れぬ美しさがあることも否定できない。
 人工物のような整然とした美しさではなく、もっと超自然的な、人間の語彙では表現できない美が。
 いったいどうすれば、一人の少女をこのような姿にできよう?
 人間にありとあらゆる生物の特徴を付加すれば、このような姿になるのだろうか?