デモンパラサイト 『それぞれの始まり、夏の終わり』32


 「だから、それがどうした? てめえが話していいのはミナの居場所と、生きてるか死んでるか……。そして、死んでるんなら生き返らせる方法だ!」


 ついに武器の間合いまで近づいた正人は、渡部の語りに神経を尖らせながら、凄んだ。
 膨らむだけ膨らんだ殺気は、それだけでも凶器になりそうだ。


 「死んだ? 彼女が?」


 なにが可笑しいのか、突然笑い出す渡部。
 正人はその様子に戸惑ってしまい、武器を突きつけようとする動きが止まってしまった。


 「なにを笑ってやがる!?」
 「君は本気で言っているのかね? 心臓を貫かれた? 頭を砕かれた? 腹に風穴が開いた? 首と胴が泣き別れになった? バカを言ってはいかん、悪魔憑きはその程度では死なない」


 笑いは沈静化していき、やがて嘲笑へと変わっていった。
 それは生徒が愚かな質問をした時の、意地悪な教師のような態度だ。


 「それだけ力を使いこなしていながら、君はまるでわかっていない。悪魔憑きの力を。そして、彼女のこともだ」


 バカにされ、怒りに満ちた表情がさらに不愉快そうに歪められた。


 「彼女は生きているよ、君がミナと呼ぶ彼女は生きている」
 「本当か!?」
 「本当だとも」


 渡部の意外な答えに、武器を突きつけるのも忘れて近寄る正人。
 警戒は解いていないものの、明らかにひと安心したようだ。


 「どこだ、どこにいる!?」
 「まあ、落ち着きたまえ」


 興奮する正人をなぜか渡部が静めるという、奇妙な光景が繰り広げられた。


 「君は彼女の居場所を突き止めた後、ここから逃げるつもりなんだろう?」
 「あたりまえだ」
 「それは残念だが不可能だ。いや、我々が邪魔をするとかいう話ではない。そんなこととは関係なく、彼女はここを出ることはないし、またできないのだよ」