デモンパラサイト 『それぞれの始まり、夏の終わり』26
その頃、突然の爆発によって、渡部たちがいるモニター室は混乱しきっていた。
「なにを慌てている? 早く爆発箇所の洗い出して映像を出したまえ」
渡部は、混乱する研究員たちの遅々とした対応に業を煮やし、急かすように指示を出した。
しかし、その指示は、研究員たちの悲鳴混じりの声とともに否定されることになる。
「だ、ダメです! この部屋の装置全てが操作不能です!」
「回線による通信も不能! 外部からのハッキングを受けているものと予想されます!」
「バカな! この研究所にハッキングだと!?」
研究員たちの報告に、白石は目を見開いて叫んだ。
企業のトップシークレットの研究を扱っているこの施設では、当然のことながら過剰なほどのセキュリティが組まれている。
ハッキングなど試みようものなら、たちまち逆探知が入って相手の居場所が判明するばかりか、カウンタープログラムが発動して相手の端末を破壊するはずなのだ。
実際、何人もの企業スパイやハッカーが侵入を試みたが、そのことごとくは返り討ちにあっている。
それらのセキュリティを抜けてくるなどと、ありえないことなのだ。
「……どうなっている? 画面をよく見せてくれたまえ」
何か思い当たったらしい渡部は、画面を凝視し、何度か操作を試みた。
そして頷くと、疑問が氷解したような晴れやかな顔で言った。
「無駄だ。これは逆探知もカウンターも不可能だ。してやられたよ」
「どういうことです?」
「私の予想が正しければ、ここも間もなく襲撃を受けるだろう。全員、退避準備をしておきたまえ」
「退避……!?」
白石の顔から表情が消え失せた。
起きるはずのないことばかり起きて、さらにまだ続くという。
その時、突然ハッキングが終わり、ようやく機能が復帰した。
喜んで復旧に急ぐ研究員たちだったが、渡部の態度は変わらない。
「白石くん、君は私と特別避難路を使おう」
「教授、いったいなにを……」
「ふむ、来てしまったようだ」
渡部がそう呟いた瞬間、実験体たちの控え室から通じるドアが破られた。