デモンパラサイト 『それぞれの始まり、夏の終わり』23
「ふふっ、根拠のない話ですね」
「てめえは喧嘩したことねえだろ? それが根拠だよ」
言うが早いか、正人の両腕がみる間に変形していき、やがて奇怪な形の武器となった。
クレイモアの基本特殊能力のひとつ"生体武器"である。
正人の言い分に、綾は盛大に吹き出した。
「人間の戦いなんて何の参考にもなりません、まだ分からないんですか?」
「分かってねえのはてめえだ!」
嘲笑を叫びで打ち消して、正人が走り出す。
背中から噴出した炎から推進力を得て、眼前の敵へ向かって一直線に正人を運ぶ。
「証明してあげますよ、今、すぐに」
綾は予想以上にことがうまく運んでいくことに、笑みを隠せなかった。
さきほどの嘲笑さえも、攻撃を誘うためのブラフ。
やはり正人は"生体武器"からの"猛炎撃"を放ってきた。
武器のリーチを信じての突進だったのだろうが、綾が少し下がってしまえば、それも無駄に終わる。
(こういった知性のない人には、おしおきが必要ですね)
ただかわして時間を稼ごうと考えていた綾だったが、ここに来て考えを変えた。
こういった悪魔寄生体の力を見くびった者には、その行為の愚かさを嫌というほど味あわせなくては。
そう決めた綾は、愚行の罰を与えんと、"落雷白電"の投射準備を始めた。
綾が意識を集中させると、右肩の水晶体が光輝き始める。
光は体外へと放出され、輝きと放電を続けるプラズマ体となって、標的である正人の頭上に留まった。
「これで認識を改めてくださいね?」
綾の宣言と同時にプラズマ体が稲妻と化して、眼下の正人めがけて襲いかかった。