デモンパラサイト 『それぞれの始まり、夏の終わり』10


 「まずはこれを見たまえ、今しがた解析班から送られてきた書類だ」
 「白石さんが担当した、例の?」
 「そう、その時に死亡していた白石くんの部下2人の検死および、周辺の調査結果だ」


 手渡された資料にすばやく目を通していく綾。
 読み進めるうちに、まだ幼さを残す顔立ちに戸惑いの表情が浮かぶ。


 「高熱による火傷や炭化は分かるとして……凍傷、粉砕骨折。槍のようなものでの刺し傷に、弾痕? 周囲には落雷に巨大な足跡……これじゃあ!?」
 「感想はどうかね?」
 「目茶苦茶ですよ、誰が書いたんですか、こんなの! きちんと調べさせないと!」


 彼女の認識や常識からいったらデタラメな調査に、綾は本気で腹を立てていた。
 人一倍責任感の強い彼女は、自分にも他人にも完璧を求める。
 この書類は、そんな綾の信念に抵触するものだ。


 「白石さんの部下と戦ったのは、白石さん自身の報告から上田正人1人しかいないはずです! それなのに、この書類には少なくとも4人か5人、下手をしたら7人か8人ほどのタイプの悪魔憑きがいたことになってしまいます!」
 「そうだね、たとえ複数の悪魔寄生体を取り入れた、多重共生であったとしても3つが限界だからね。だが、考えてみたまえ。彼は普通の悪魔憑きではなく、彼女によって悪魔憑きとなった」
 「……ということは教授、まさか?」
 「そう、その可能性が非常に高いのだよ」
 「なるほど、分かりました。監視役はお任せください」
 「いい返事だ、利家くん。あとだ、これから少し付き合ってくれたまえ。利家くんも含め、皆に知らせたいことがある」