世界設定の試行錯誤が形になったもの=ステージ
論としては、前回で終了。
共通認識のパターンを増やして、出来ないことを出来るようにすると、がぜん面白くなるぜって話。
出来ないから嫌いだって言っても、いちおうやってみようよってこと。
とくにカジュアル(身内内)でプレイしてるならね?
今回は、ステージの概念も試行錯誤を形にしたものだった、というお話。
ステージについては何度も説明したように、そのセッションにおいてPCが活躍する舞台のこと。
広い意味では、そのセッションの舞台となる世界観そのものと言っていい。
世界観が変わるだけでなく、ルールも追加や変更が加わることから、マンネリの打破や新たな楽しみを見出だすためによく用いられるようになった。
最近では企業側もステージの概念を取り入れ始め、《ダブルクロス》はもとより、《デモンパラサイト》や《ナイトメアハンター=ディープ》にも広まった。
『ステージ』という言葉を生みだし、定着させたのはFEARの《ダブルクロス》だが、ステージの前身となる概念は以前から存在していた。
古くはTRPG初期の頃。
ダンジョンから街や野外へと冒険の舞台が広がり、まだ公式の世界観すらなかった時代。
決められていない設定を埋めるべく、参加者が知恵や意見を出し合って街ができ、住人が現われ、世界ができていった……のだろう。
だろう、というのは、ワシはその時代にTRPGをやっていなかったので、分からないと意味だ。
ただ、これらの創作活動は、共通の概念にはなりえなかった。
今ほどユーザー同士の交流がなかったからだ。
それに彼らにとっては、ステージを作ることなど当たり前で、わざわざ概念化しようとも思っていなかったのだろう。
以後、システムには必ず公式世界がつくようになって、ステージを作る必要をみんなが感じなくなった。
それから時が過ぎて、1999年。
TRPG冬の時代と呼ばれ、絶滅すら危ぶまれた年に《ビーストバインド》が発売。
その公式世界に《ドミニオン》という世界観の概念が書かれていた。
いわば、TRPG史上初めて明文化された概念としてのステージである。
一体の強力な悪魔または守護者によって構築された世界、それがドミニオン。
ドミニオンに定義されているのは実に様々で、街の路地裏から異空間、天国や地獄。
果ては、我々が住む地球そのものまでドミニオンであるとした。
地球すらもドミニオン、この一文がユーザーに与えた創作の余地は絶大だった。
そして熱心なファンによって《ダブルクロス》が作られ、その中でドミニオンの概念は受け継がれた。
ひとつのシステム上の概念だったドミニオンを『ステージ』という名で、すべてのシステムに通じる概念に進化させたのである。
さらにステージ専用のデータやルール、シチュエーションを示すことで、『ルールやデータも創作してよい』と暗示。
ユーザーが創造できることを、格段に増やした。
以上、ステージの歴史をふり返るとともに、試行錯誤が形となった歴史も書き記すことができたと思う。
より多様に、より分かりやすく。
それを目標に、ユーザーやメーカーがそれぞれ努力していけば、TRPGはさらにスムーズに、バリエーション豊かな楽しみを味わえる遊びになるだろう。
そのためにも、議論や論考や交流には意味があるはずなのだ。