ヒトモドキ 本編8
「――失敗ですか、存外使えませんね。仕方ありません、プランBを実行します」
【GM】:とりあえず、屋敷の入口まで来ました。
【まほ子】:来た時のように下水道を通りましょう。
外を歩くより追跡はしにくいはずです。
【義経】:「そうだな」
【GM】:下水道内を歩き続けるショウコたち。
【ショウコ】:「……エスちゃん?」
【GM/エス】:「なに?」
【ショウコ】:「なに……食べてたのかな?」
目撃はしましたが、違うかもしれないので……。
【義経】:……気持ちは分かるが。
【GM】:エスは事も無げに答えます。
【GM/エス】:「ニンゲンだよ」
【ショウコ】:「なんで、人間を食べるの……?」
【GM/エル】:「それは、我々が人間になるためだ」
会話にエルが入ります。
【義経】:「どういう意味だ?」
【GM/エル】:「我々が生まれた時、博士は言った。『人間になって、生きてくれ』と。博士は我々をかばって、ヤツらから我々を逃がしてくれた。我々の栄養供給には魚が使われていたらしい。生まれたばかりの我々の姿は、魚に近かった」
【GM/エム】:「だから考えたのさ。魚を栄養にして魚に近くなったなら……」
【まほ子】:「人間を食べれば、人間に近付く……ですか」
【GM/エス】:「そうだよ。ほら、どこから見てもニンゲンでしょ?」
微塵の屈託もなく言う。
【ショウコ】:「違う……それは違うよ……」
【GM/エス】:「なんで?」
【まほ子】:「あなたたちのやっていることは間違っています」
【GM/エル】:「何を言っている? 我々は正しい。こうやってニンゲンになろうとしている」
【義経】:「残念だが、それは見掛けだけだ。心までも人間でなければ、人間とは言えない」
【GM/エム】:「どういうことだい?」
【義経】:「人間……というより、生物は例外を除いて同種は食べない。つまり人間は人間を食べることはない。それはいわば、生物の禁忌だ」
【まほ子】:「そもそも、人間を食べるものたちを人間が受け入れることはありません。義経さんが言ったように、禁忌だからです。禁忌を侵したものを恐怖するのは、自然なこと」
【GM/エル】:「なんだと? で、では我々は……」
【義経】:「おまえたちが人間を食べ続ける限り、おまえたちは人間にはなれない。人間としても受け入れてはもらえない」
【GM/エム】:「そ、そんな……」
【ショウコ】:「エスちゃん、人間になるためなら、由衣ちゃんも食べる?」
【GM/エス】:「……やだ」
【ショウコ】:「由衣ちゃんを食べないと、2度と人間になれなかったら?」
【GM/エス】:「そ、それでもやだ! お姉ちゃんは食べないよ!」
【ショウコ】:「エスちゃんが今やってることはね……由衣ちゃんを食べ続けてるのと同じなんだよ?」
【義経】:「博士、に置き換えてもいい。おまえたちは博士を食べ続けているのと同じだ」
【GM】:重苦しい沈黙がやってきます。
自分たちのしでかした事の重大さに気付きはじめたようです。
【一同】:……。
【GM】:その時、ショウコの携帯が鳴ります。
由衣の携帯からのようです。
【ショウコ】:電話をとります!
「由衣ちゃん!?」
【GM】:電話から聞こえたのは由衣の声ではなく、静かな男の声です。
【GM/隊長】:はじめまして、野火ショウコさん。私は先ほどの部隊、ひいては今回の作戦の全指揮をとっている者です」
【ショウコ】:「由衣はどこ!?」
【GM/隊長】:「片桐由衣さんをこちらで預かっています。今夜0時までに〇×ビルという廃ビルに“あの3人”を連れて来て下さい。もし連れて来ていただけなかった場合、片桐由衣さんの身の安全は保証しかねます」
【ショウコ】:「由衣は無事なの!? 由衣を出して!」
【GM/隊長】:「用件は以上です。それでは」
【GM】:電話が切れます。
【ショウコ】:「〜〜!!」
お、思わず携帯を握りつぶしそう……!?
すぐに、電話の内容を皆に伝える!