闇の憐れみ、光の裁き クライマックス1


 清涼学園屋上。
 夜闇が辺りを包み込み、空には月さえ出てはいない。
 満足な明かりなどひとつもない空間であったが、悪魔憑きであるショウコたちにとっては、さほど不便ではない。
 悪魔寄生体が強化した五感を通せば、眼下の街に灯る明かりだけでも充分なのだ。
 ゆえに、この場の張り詰めた空気も、対峙する律子から放たれる底知れぬ圧迫感も、常人よりも正確に感じていた。




【GM/律子】:「あなたがたが思っている通り、私は浦上律子ではありません」


義経】:「やはりか」


【GM/律子】:「ただし、身体は律子さんです」


リュウヤ】:「まるで謎かけだな、どういう事だ?」


【GM/律子】:「数年前、私の宿主である浦上律子さんは悪魔憑きに襲われました。その時に私が覚醒し、敵の撃退に成功しました」


【ショウコ】:「?」


【GM/律子】:「しかし、その戦いで脳の大部分に致命的なダメージが与えられていたのです。脳を修復するべく、私は身体のほとんどを脳と融合させました。幸運にもその試みは成功し、身体の修復にも成功しました」


【優】:「気味悪い話ね、まるで悪魔寄生体がしゃべってるみたいじゃない」


【GM/律子】:「そう、私は悪魔寄生体そのもの。律子さんの脳は修復する前に、すでに人格を司る部分が破壊されていたのです。宿主と完全に融合した、などといったことは異例のことらしく、やがて私は他の悪魔寄生体と違うことに気付きました」


リュウヤ】:「というと?」


【GM/律子】:「ひとつは、人間と同程度の自我と呼べるものが生じたこと。そして、もうひとつは……」
 手の平を上にし、スッと前に出す。
 すると、一瞬のうちに輝きとともに、小さな結晶体が現われる。
 ショウコたちもよく知っているだろう、魔結晶だ。


リュウヤ】:!?


義経】:「悪魔寄生体を……生み出せるだと?」


【GM/律子】:「その通り」


【ショウコ】:「そんなことはどうでもいい、志帆に何をしたの!? 目的はなに!?」


【GM/律子】:「目的? 復讐の手助けです」


【ショウコ】:「復讐って……」


【GM/律子】:「私の宿主の浦上律子さんが悪魔憑きに襲われた時、恐怖や戸惑いなど、幾多もの感情が起こりました。その中でもっとも強かった感情のひとつが、自分を殺した相手に対する怒り、理不尽に殺された怒りでした。私が覚醒したのも、その怒りの感情がきっかけだったかもしれません」


【優】:「それで、なんで他人の復讐の手助けするわけ?」


【GM/律子】:「自我を得た私ですが、宿主の感情が完全に消えたわけではありませんでした。怒りの感情だけは今も残り、私を駆り立てます。そして、この感情は生物が生きるためには必要なものです」


義経】:「……」


【GM/律子】:「しかし周りを見渡せば、自衛のための怒りすら抑えている人間が多かった。だから私は、生存に必要な行動のひとつ、報復をその人たちに提案したのです」