最終回・愚鈍な自動人形4

魔女の娘と呼ばれ、恐れられ、憎まれていた私を支えてくれたのは、父さんとあの子だった。
けれど、村に疫病が流行ったあの時…。
「魔女を殺せば疫病が治る」
そんな根も葉もない噂が広まったあの時…。
村の人みんなが私を殺そうとした、あの時…。
倉庫に隠れた私は扉の隙間から見てしまった。
私を守ろうとした父さんとあの子が、殺されるのを。
あの子の首が宙に舞ったのを見た時。
私の中でなにかが弾けた。
次に気付いた時には血溜まりの中。
みんな死んでいた。
それから私は村を下り、街へ出て。
子供が一人で生きていけるわけもなく、人買いの組織に売られ、狂った人形師に売られ。
そして…。




●車で繁華街を走るシルバたち。
そこにジョジョから連絡が入る。


ジョジョ】:シンジを見つけたが逃げられた…なんとか止めようとしたら、逆にやられてな…。
【シルバ】:拾っていこう、場所はどこだ?


しばらくしてジョジョと合流。
再びジョジョが強化された嗅覚でシンジの足取りを辿る。
匂いが強いのは、北城学園と倉庫街の2カ所。
エレナたちはまず、近い北城学園へ向かった。




●北城学園。
エレナは、学校周辺を探していた明美を見つける。


【エレナ】:鳥居さん!シンジ、こっちに来なかった?
明美NPC)】:エレナちゃん!…ううん、今日は一度も見てないわ。学校にも来てなかったし…。


落胆するエレナに、学校そばにある文具屋のおばあちゃんが声をかけた。


【おばあちゃん(NPC)】:おや、シンちゃんがどうかしたのかい?
【エレナ】:あ、いえ…なんでもないです。
【おばあちゃん】:それならいいんだけどねぇ。この頃、シンちゃんがまた元気そうだったから。
【エレナ】:そう…なんですか?
【おばあちゃん】:ああ、この街に来た頃のシンちゃんは、ずっと黙ってなにかを我慢してるようでねぇ、見て居られなかったよ。
明美ちゃんと遊ぶようになって、明るくなったと思ったら、中学に上がった時から、また塞ぎ込んでしまってね…。
【エレナ】:(シンジが…悪魔憑きになった頃?)
【おばあちゃん】:あの子はほんとは素直な優しい子なんだ。もしシンちゃんの友達なら、仲良くしてやっておくれ?
【エレナ】:…は、い…。


エレナの胸の奥からなにかが込み上げ、いっぱいになった。
言葉を紡ぐ余裕などなく、ただ涙を堪えるのがその時できた精一杯だった。




●倉庫街。
すでに時刻は夜の8時を回り、人通りさえもなくなっていた。
衝動に意識を支配される危険を侵しながらも、ジョジョは嗅覚を能力で強化し、シンジの居場所の特定に尽力していた。
他の者も、付近住民などへの聞き込みを行い、捜索を続ける。
そして、ついに居場所の特定に成功する。
そこは以前、暴走族“ケルベロス”がアジトとして使っていた、廃倉庫であった。




〜クライマックス〜
●エレナたちが倉庫の扉を開け、中に入る。
中に明りはなく、ただ外の電灯によって照らされているだけだった。
その奥に、シンジが1人座っている。


【シンジ】:やっぱり来たのか…こんなところまで…。
【シルバ】:さあ、遊びは終わりだ。帰るぞ?
【シンジ】:いやだ。
【シルバ】:…なに?
【シンジ】:そうやって、いつまでも強引にすれば言うこと聞くと思うなよ…!
【シルバ】:やはり口で言っても分からんようだな。


シンジに近付こうと歩み寄るシルバの前に、両手を広げたエレナが立ちふさがる。


【シルバ】:どけ、おまえはヤツを甘やかしすぎだ。
【エレナ】:シンジは傷つけさせない…。
【シンジ】:いまさら味方ぶるなよ!…僕を裏切ったくせに…!
【エレナ】:!
ジョジョ】:シンジ、本気で言っているのか!?
【まほ子】:…詳しい事情は知りません。わたしは、自分の役目を果たすだけです。
【シンジ】:…もういいよ、邪魔するなら、みんな倒してやる。


立ち上がり、悪魔化するシンジ。
その影から表情のない2体の人形が現れる。
その顔形はミレイのものだったが、あきらかに造りが雑だった。


【シンジ】:ミレイを完成させるんだ…それが僕に残ったすべてなんだ…。


続いてシルバ、ジョジョ、まほ子も悪魔化。
まさに一触即発の状態だった。


【エレナ】:やめて!なんで…みんな戦わなきゃいけないの!?


少女の叫びは、あまりに悲痛だった。




(続く)