わたしのかえるばしょ3

●深夜の大友病院に急患が運び込まれた。
車輪付の担架に運ばれている患者の周りで医者や看護婦が手術室へ向かって走る。
患者が瀕死の重傷であったからだ。
年の頃は14、15歳の少年。
少年は混濁した意識の中、始終何事かをブツブツと呟いていた。


“俺じゃない…アイツが悪いんだ”と。




●調査開始から翌朝の北城学園。
昨日と同じように登校してきたシンジたちがホームルームを受けていると、突然教室のドアが開けられた。
入って来たのは、1人の女生徒。
今だ意識不明のはずの富野 哀だった。
理解不能の事態に教室が沈黙に静まりかえる中、犬飼が怯えるように後退りしようとして、座っていた机に体をぶつける。
その顔面は誰が見ても蒼白だった。
沈黙から一転、騒然となる教室。
クラスメイトたちの質問にそつなく答える哀。
シンジは、彼女から悪魔憑きの気配を感じとる。




●休み時間に人気のない屋上近くの階段へ哀を呼び出し、問い詰めるシンジ。


【シンジ】:意識不明の人がこんなに早く回復するわけない…君はひょっとして…!
【哀?(NPC)】:そうよ、あたしは哀ちゃんじゃない…メグよ。


メグは語る。
哀の帰りが遅いことを心配して、匂いや仲間からの情報を頼りに森林公園へ向かったこと。
そこで犬飼たちが哀をリンチしているのを目撃し、助けようとしたが返り討ちにあってしまったこと。
復讐のために、哀に化け、アイとして動物たち(悪魔憑き含む)を集め、犬飼たちの情報を集めていたことを。


【アイ(=メグ)(NPC)】:あたしたちは皆、飼い主や自分たちを心ない人間に傷つけられているの。中には殺された子だっているわ。そんなことをしたやつなんか絶対に許せない。苦しめるだけ苦しめて殺すの。
お願い、力を貸して!
【シンジ】:待ってよ、殺すのはだめだよ。そんなことしても富野さんは喜ばないよ!
【アイ】:ならどうすればいいっていうの!?


一瞬対立しかけるが、「犬飼の処遇については哀の意識が戻ってから、彼女に決めてもらう」ことで結論に達し、お互いに協力することになった。
その後シンジはシルバたちに連絡を入れた後、アイを連れ、犬飼を問い詰めて自首するよう説得を試みようとする。
連絡を聞き、合流に向かうシルバとジョジョ




●昼休みの校舎裏。
そこにはシンジとアイ、そして犬飼がいた。
シルバはなぜか隠れ、ジョジョは気になることがあると、別行動をとっていた。


【犬飼(NPC)】:(わざとらしいほどさわやかに)どうしたんだい、安野くん?こんなところに呼び出して?
【シンジ】:富野さんをあんなふうにしたのは君なんだろ?もう調べはついているんだ、あきらめて…。
【犬飼】:(バカにしたように)ふぅん?それじゃシラは切れないなぁ。そう、僕がやったよ。二度と立てないくらいボコボコにね?
【シンジ】:もう終わりだ…皆や先生に言えば……。
【犬飼】:いいよ?言ってみてごらんよ?かたや不登校がちの生徒、かたや模範的な優等生…先生たちはどっちを信じるかなぁ?何のために僕が優等生を演じていると…思っているんだい?
【シンジ】:……っ!?
【アイ】:言わせておけば…!(飛び掛かろうとする)
【シンジ】:(アイを押し止どめて)…君の考えはわかったよ。なら、ボクにも考えがあるから…。
【犬飼】:へぇ〜、それは興味があるなぁ、楽しみだよ。
…チャイムも鳴ったから僕は教室に戻るよ。遅刻なんてできないしね?あっはっはっは…。


勘に触る笑いを残して犬飼は去った。
その後ようやくシルバが姿を表す。


【シンジ】:シルバさん!いるなら、なんで出て来なかったんですか!?
【シルバ】:おまえが進んで行動を起こすのは珍しかったからな。おまえがどこまでできるか、見守っていてな…。
【シンジ】:…絶対ウソだ。
【シルバ】:(ニッと笑って)本当だ。




●その頃、別行動をとっていたジョジョは、学園近くの空き地で動物が種別を問わず集まっているのに出くわす。
行動を別にしたのは、人間ですら違和感を覚えるこの光景を調べるためだ。
彼ら全員が学園の方角を見つめながら、仲間について話し合っている。
端々に「アイ」の名前が出てきた。
しばらく監視していると、夕方になってシンジたちが少女とともにやってきて、動物たちと話し出した。
シンジたちの表情から事情を察したジョジョも姿を表し、合流を果たした。




(続く)