ヒトモドキその3

連絡を取り合いながら、それぞれのルート(ショウコとまほ子は下水道から、義経は〈飛行〉で空から)で郊外の屋敷に向かう3人。


【まほ子】:由衣さんをさらったのは…私の依頼人かもしれません。
【ショウコ】:どういうこと?
【まほ子】:不審に思って調べたんです。
…実はその依頼人、企業の悪魔憑き捕獲部隊に所属する人間で、エスちゃんを狙っているようなんです。
義経】:清掃員…なぜそれを、最初から我々に言わなかった…!?
【まほ子】:…無関係な人を巻き込みたくなかったんですよ!
【ショウコ】:じ、じゃあ由衣は…!?
義経】:落ち着け、片桐の手かがりがわからない今、屋敷に向かうほうが先決だ。
【ショウコ】:でも…!
義経】:今できる最善のことを、やるしかない。
【ショウコ】:…わかったよ。




●屋敷の前で合流した3人。
ロックを解除しながら屋敷の奥へと入り、研究所らしき場所へと踏み込む。
その途中で見つけた日記。
そこには、屋敷の主の研究者が書き残した記録が記されていた。


研究者は人造生命の研究をしていたこと。
資金欲しさに企業の指示に従い、3人の生物兵器を造ってしまったこと。
3人に親子ほどの愛情を注いでいた研究者は、3人を逃がし、人として生きていかせようとしたこと。


そんな内容が記されていた。




●地下の研究所。
その奥でエスとエル、エムがなにかを囲んで座っている。
そこから聞こえる耳障りの悪い咀嚼音。
ショウコたちが声をかけたのに反応し、驚いたように振り返ったエスの口元と服は…血にベッタリと染まり、両手には人間の腕らしきものを持っていた。


【ショウコ】:!?
【まほ子】:…!
義経】:予想はしていたが…最悪の結果だな。
【エム(NPC)】:あんたたちは何者だい?あいつらの仲間かい!?
義経】:違う、我々はセラフィムの者だ。
【まほ子】:…誰か来ます!


ドアを開けて入ってきたのは、武装した数人の男たち。
彼らを率いているのは、まほ子の依頼人であった。


依頼人NPC)】:よし、目標を捕獲する。部外者も一緒に始末しろ。情報が漏洩してはかなわん。
義経】:“あいつら”とはこの者たちのことか。…しかし、問答無用で部外者を抹殺とはな。
【まほ子】:ふりかかった火の粉…もといホコリは払わせていただきます!


男たちも訓練されているとはいえ、所詮はただの人間。
ここでも悪魔憑きのまほ子によって男たちは蹴散らされた。


依頼人】:(無線機で)く…本部、作戦は失敗…プランBを……(気絶)。


男たちを蹴散らした後、ショウコたちは再びエスたち3人に話しかける。


【エム】:あんたたち…あいつらの仲間じゃないみたいだね。
【エル(NPC)】:おまえたちも博士に造られたのか?
義経】:いや、違う。我々は悪魔憑きだ。振るう力は似ているかもしれないが…。


【ショウコ】:エスちゃん!由衣が、由衣がさらわれたの!心当たりはない!?
エスNPC)】:お姉ちゃんが!?
【まほ子】:目的がエスちゃんたち3人なら、追っ手が来るかもしれません。
ここは場所を移しましょう。
義経】:そうだな…(エスたち3人に)おまえたちも一緒に来てくれ。今は協力しあえるはずだ。
【エルとエム】:わかった、信用する。


屋敷を出るショウコとエスたち。
その時、ショウコは屋敷の入口に見慣れた形の携帯が“置いてある”のに気付く。
それは由衣の携帯だった。
まるで、タイミングを計ったかのように由衣の携帯に着信が入る。


【ショウコ】:(電話をとり)由衣ちゃん!?


だが、電話から聞こえたのは由衣の声ではなく、静かな男の声。
どうやら先ほどの男たちの隊長らしい。


【隊長(NPC)】:はじめまして、片桐由衣さんをこちらで預かっています。今夜0時までに〇×ビルという廃ビルに“あの3人”を連れて来て下さい。
もし連れて来ていただけなかった場合は…片桐由衣さんの身の安全は保証しかねます。
それでは(電話が切れる)。
【ショウコ】:〜〜〜!!


一方的に電話を切った相手。
ショウコは怒りのあまり、思わず携帯を握りつぶしそうになった。
すぐに電話の内容を皆に伝える。
これからどうするか?
エスたちを連れていくのか、いかないのか?
ショウコたちは今後の行動を模索した。




(続く)