デモンバラサイト〜闇の憐れみ、光の裁き3

〜クライマックス1〜
●清涼学園屋上。
満足な明かりなどない、この場所にショウコたち4人と律子だけが立っていた。


【律子】:あなた方が思っている通り、私は浦上律子ではありません。


律子が沈黙を破るように真実を語り出す。


【律子】:本物の律子さんは数年前、すでに悪魔憑きによって殺されています。…私ではなく別の悪魔憑きによって。私が目覚めた時に、この体に入り、律子として生きてきたのです。
【優】:まるであんたが悪魔寄生体みたいな言い方よね。
【律子】:そう、私は“モリオン”に分類される悪魔寄生体。私たちに名前の概念はないので、好きに呼称なさって構いません。
【流也】:目的はなんだ?おまえのやっている事はわからん事だらけだ。
【律子】:まもなく訪れる‘災厄’を生き残る者を育てること、そのための力を与えること、それだけです。…今までの方は制御できずに破滅を迎えましたが。
義経】:詭弁だな、力を与えた責任はどうする。
【律子】:私は兵器と同じ。ただ与えるだけしかできません。どう使うかは、その人次第です。
【ショウコ】:そんなの…!
【律子】:いいのですか?…(上空を指差して)私ばかりに構っている時間はないと思いますよ?


律子が指したのは、街に向かう無数の虫の群体。
その一匹一匹が自ら光を放ち、1人の少女を運んでいた。
少女は、浦上志帆だった。


【ショウコ】:志帆!?
【律子】:あの娘は確かに友に恵まれていたのでしょう。ショウコさんを見れば、それは分かります。…しかし、人の憎悪や怨嗟がそれほど容易く消えるとは思わないことです。
【流也】:……後は俺にまかせてもらおう!おまえたちは、あの娘を追え!
【ショウコ】:ごめんなさい、流也さん…。…〈身体強化〉!
義経】:私が足止めしている間に追いついてくれ!…〈飛行〉!


志帆を追って、ショウコと義経は屋上から去る。
残っているのは、流也と律子。
そして、もう一人…


【流也】:おまえは行かないのか?
【優】:あの娘と親しくもないわたしが行っても、ね。それに…コッチのほうが性に合ってるし(拳を握りながら悪魔化)。
【流也】:…ああ、同感だ(悪魔化)。


天使のような姿に悪魔化した律子と戦う、優と流也。
律子はなぜか抵抗する素振りすら見せず、優の刃によって首を刎ねられる。


【優】:!?
【流也】:な、なぜだ!?
【律子】:私の役目は終わった、ということです。あなた方の正しさ、彼岸の先で見ていますよ…。


そう言い残し、律子は絶命する。
呆然としていた優と流也であったが、すぐに立ち直り、ショウコたちに合流するべく、後を追った。




●先ほど流也が群体の一部を倒した場所。
志帆をイジメた、6人の生徒のうちの1人の自宅。
その自室に設けられているバルコニーに、志帆は降り立った。
手に剣呑な光を放つ一挺の拳銃を握り、沸き上がる殺意を隠そうともしていない。
部屋に入ろうとする志帆を、彼女目の前に降り立った義経が押し止どめる。


【志帆】:…邪魔しないで。
義経】:そうはいかないな。
【志帆】:くる日もくる日も理不尽なことされて、親も先生も、誰もわたしの話しなんか聞かなくて…。苦しかった、辛かった。…死のうとも思ったわ。この気持ち、コイツラを殺さなきゃ、晴れやしないのよっ!
義経】:なぜ、ショウコにその事を話さなかった、友達ではなかったのか?
【志帆】:友達だから、大切だから…重荷になりたくなかったのよ……


苦しげに呟くかのように言う志帆。
その直後、夜の暗黒を払わんばかりに、力強い声が響いた。


【ショウコ】:…バカァ――――ッ!!!




(続く)