デモンパラサイトキャンペーンその1

折尾コンベンションの後、マナバードへ行き例会に参加。
ワシがリクエストしていたデモンパラサイトをてんちょがやってくれましたよ、やっほーい。
で、今回はプロローグから始まる、いつもとは違った進行で。




夏の街、大友市。
朝、その大友駅の人ゴミの中を歩く1人の少年、〔上田 正人〕。
正人の耳に突然「ギャッ」という子猫の悲鳴が聞こえた。
車道へ向かうと、そこには車に轢かれ、死にかけた子猫がか細い声でニャーニャーと泣いていた。
飛び出した内臓がアスファルトの上で焼け焦げる、嫌な臭いが鼻孔を突く。


突然に正人の横から差し出された手。
振り返ると、そこには病院の検査服のような、簡素な服を着た、正人と同年代くらいの少女が立っている。
少女は子猫を抱き上げると、無表情にその首を捻った。
子猫はもう鳴く事はなかった。
ざわめく人々や驚く正人の事など意に介さず、少女は子猫の死体を胸元に抱いたまま、どこかへと行こうとする。
「そいつをどうするつもりだ?」
正人は少女の真意を計りかねて、尋ねる。
「………。」
その問いに少女は歩みを止めた。
「墓を作るんなら、手伝うが…」
「ほんと?」
少女が初めて振り向いた。
その表情は涙を堪えるかのように強張っていて、とてもさっきの、無表情に子猫の首を捻った少女と同じとは思えない。
「ああ、いい場所を知ってる。…こっちだ。」
奇異と恐怖の視線を2人に向ける人だかりに一瞥をくれながら、正人は少女を近くの公園へ案内する。
2人で穴を掘り、子猫を埋めて墓を作った。
「…ありがとう。」
共に子猫に祈りを捧げた後、少女は正人に微笑んだ。
その微笑みに安堵を覚え、正人は彼の人生でも数少ない、安らかな笑みを少女に見せる。
その時、尋ねるような男の声が聞こえた。
「…正人?」
その後ろからの声に正人は聞き覚えがあった。
中学時代から親友だった〔黒桐 朱夜〕。
2年前の事件で彼の人生が狂ってから、一度も連絡が取れなかった。
2年ぶり、久しぶりの再会だ。
「朱夜か、学校はいいのか?お前は俺みたいなオチコボレとは違うだろ?」
「そういう正人こそ何してるんだ?」
「ああ、隣りのコイツと一緒に子猫の供養をな。」
「…誰もいないよ?」
少女の方に振り返った正人だが、確かにそこには誰もおらず。
ただ、子猫の墓だけが残されていた。
「なあ…朱夜。」
「ん?」
「これ、夢じゃないよな…?幻じゃないよな…?」
「どうしたんだ、正人?」
混乱気味の正人たちの前に、数人の黒服にサングラスの、体格のいい男たちがやってくる。
「君たち。変わった少女を見掛けなかったかね。」
「さあな、俺は猫の墓を作っていただけだぜ。」
「そうか、なら見掛けたら連絡を入れてくれ。相応の謝礼はする。」
名刺を正人と朱夜に渡していずこかへ去る黒服たち。
「何者かな、あいつら。」
朱夜は名刺を破り捨てながら、正人に疑問を口にした。
「さあな。」
「そういえば正人。そろそろ学校じゃないのか?」
「ん、そうだな。朱夜、これ俺の番号だ。なにかあったらいつでも連絡をくれ。」
「もちろん。これが僕の番号。たまにはかけてくれよ?」
「ああ、じゃまたな。」
連絡先を交換し、正人と朱夜は別れた。


公園の草むらで先ほどの少女が傍らの犬に小さな声で話しかける。
「あの人、いい人だね、また会いたいな。」
「やめておけ、ミナ。ろくな事にならないぞ。」
傍らの犬は当然のように人語を語る。
「それにヤツラも追ってきた。ここを離れないと…。」
「うん。…行こう、キューちゃん。」
少女と犬は誰かから逃れるように、どこかへと去っていった。




(続く)