デモンパラサイト 『それぞれの始まり、夏の終わり』28


 カツンと固い音を立ててガラスに当たった、直径1cmくらいの球。
 さきほどのものより威力は低いが、彼らに馴染みの深い、爆弾だ。
 その正体に気づいた職員たちは戦慄、恐怖のあまり体が麻痺してしまう。
 動けたのは、予測していた渡部と、反射的に脱出路を起動した白石だけだった。
 直後、爆発。
 いかに強固な強化ガラスといえど、爆弾による攻撃を想定しているはずもなく、粉々に砕け散った。
 爆発の余波がモニター室の装置に襲いかかり、次々と誘爆させていく。
 部屋にいるのは悪魔憑きでもない一般研究員たちは、二重三重の攻撃をまともに食らい、残らず全滅した。
 人や物をなぎ倒して部屋に侵入した正人は、めざとく特別脱出路を発見。
 クレイモアの特殊能力"高熱融解"で熱した手を床に押しつけた。
 すると、みるみるうちに床が加熱で赤くなり、柔らかくなっていく。
 最後には火にかけたバターのようにトロトロに融けてしまい、隠されていたゴンドラの通路であるシャフトが露となった。
 正人が一瞬、床に倒れたまま動かない綾に目をやる。


 「言っただろうが。実戦経験の無さがおまえの敗因だってな」


 吐き捨てるようにそう言うと、シャフトに飛び降りた。
 飛び降りた後も自由落下に任せることなく、シャフトの壁を蹴り、走るように降りていく。
 長い。
 シャフトはとても長かった。
 そして、これだけ急いでいるのに、ゴンドラの駆動音が聞こえなかった。
 つまりは、相手のスピードはかなりのもので、追いつけないのだ。
 予想以上の手際と準備の良さに歯軋りをしながら、正人はさらに加速した。