デモンパラサイト 『それぞれの始まり、夏の終わり』17
古風な作りをしている部屋で、朱夜がパソコンを操作していた。
その横にはキューもいる。
モニターに写し出されているのは、機材やモニター、装置がところ狭しと置かれた部屋だった。
斜め上から見下ろした視点で映るその部屋の中には、白衣を着た職員らしき人々が休むことなく操作や計測をし続けている。
中央には彼らに指示している初老の男と、助手のように付き従う男。
「初老の男が渡部、隣にいるのは白石。どちらもあそこでは重役らしい。ミナの実験の時には必ず来ていた」
「なるほど」
「しかし、たいしたものだ。施設のセキュリティにハッキングするとは……」
「調べものついでの手慰みに、少しやっていた。それだけだ」
言葉を交わしながらも、2人の視線はモニターからピクリとも動かない。
あくまでも静かに自らの敵を視認している。
「さて、これで準備は出来た。あとは明日だ」
「口惜しい限りだ……私もミナを助けに行きたかったが……」
「目立ちすぎると言っただろう? 戦力を知られていない正人のほうが都合がいい。」
「たしかにな……」
理屈では理解しているものの、キューは不機嫌さを隠しもせずに低く唸った。
自分ではなく、さして面識もない正人に突入を任せるのが、それほど口惜しいのだ。
たしかに正人は悪い人間でもなければ、弱くもない。
しかし、それさえも理屈であり、やはり自分がミナを助けに行きたいというのが本当のところだ。
「正人は決めたことは必ず成し遂げる人間だ。明日に全てを託そう」
そう言いながら、いざとなれば突入も辞さないと考えている朱夜。
それは正人との友情ゆえであり、自分の力を試したいという好奇心であり、溜まっていた鬱憤を少しでも晴らしたいという好戦的な衝動でもあった。