デモンパラサイト 『それぞれの始まり、夏の終わり』20


 「そいつらも人類の進歩とやらに必要なのか?」
 「そうです」


 今度はいつものように、落ち着いて答えられた。


 「人間もか?」
 「そうです。構造の違う動物では意味があまりなく、研究も進みません。人類はもっと進歩しなければ生き残ることはできない、と教授はおっしゃっています。手段も選びませんし、法も守りません」
 「ずいぶんとマッドな方々だな、おまえらは」


 皮肉げに口を歪める正人。
 その顔はひきつっている。


 「わたしたちの技術に法や道徳が追い付いていないだけですよ。いつの時代も、先を行く者は異常者扱いされるものです」
 「ミナもか?」
 「はい?」
 「ミナも必要な犠牲ってわけか? 喜んで犠牲になるべきだって?」


 話していくうちに、正人から怒りがにじみ出してきた。
 綾もそれに気付いているが、まったく動じない。


 「そうです。なぜ逃げ出したのか、わかりません。いいじゃないですか、成功すれば、よりよい能力を持った人間になれますし、失敗しても次の礎となる。どちらにしても人類の進歩の歴史に永遠にその名を残せる……いわば、永遠の生を手に入れることになるのですから!」