デモンパラサイト 『それぞれの始まり、夏の終わり』18
翌日も、授業を終えてから戦闘テストが行われた。
暴走や反抗を防ぐ意味で、テストを受ける者は必ず持ち物と身体検査を受ける。
「だからって毎回はいらねえと思うけどな」
「きさまのような外部から来る人間も多い。なにかあっては一大事なんだよ。黙って従っていればいいんだ」
担当は毎回変わり、今回の男担当は岩佐だった。
うんざりした様子の正人に舌打ちをして、渋々と作業を続けている。
普通なら3分ほどで終わるのだが、ずいぶんと念入りにやったのか、5分以上もかかった。
そのせいで控え室に入るのが遅れ、身体を充分にほぐす時間が取れそうにもない。
テストとはいえ、かぎりなく実戦に近い。
充分な準備なしにできるものではないのだ。
正人が控え室に入ると、すでに準備体操をしていた綾が声をかけてきた。
「遅かったですね?」
「岩佐って野郎がタラタラやってたせいでな」
「うーん、そんなに難しいことではないんですけどね。岩佐さん、処理能力が低いんでしょうか?」
「かもな。やる気はあったみてえだが」
「やる気ですねえ……ないよりはマシなんでしょうけど」
岩佐の能力の低さに、綾は嘆息した。
あの異動以来、ことあるごとに綾につっかかってくるので、わりとマイペースな彼女でもさすがに閉口している。
聞くところによると、正人にもつっかかっていってるらしく、よく言い合いになっているのが見かけられているようだ。
しかし、たかが身体検査にすら倍以上の時間がかかる程度の能力なら、リーダーから外されても仕方ない。
徹底的な能力主義であるここで、能力の低い者は淘汰されるのは常識。
人類の進歩に無能な者は必要ないのである。
「なあ、利家」
「はい?」
綾が岩佐に対する認識を新たにしたところに、正人が唐突に話しかけてきた。
しかも、いつになく神妙で、真剣だ。